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Netflix が尾田栄一郎の伝説的な漫画『ONE PIECE』を実写化すると発表したとき、世界中のファンは半信半疑だった。誰があのエネルギーと魅力、そして心を持つモンキー・D・ルフィを演じられるのだろうか? 2023年にシーズン1が配信されると、多くの観客は驚かされた――作品は原作の精神を忠実に再現し、さらに世界に新しいルフィの顔を紹介した。それが若きメキシコ人俳優、イニャキ・ゴドイである。
その無邪気な笑顔、溢れるエネルギー、そして自然体な演技で、彼は瞬く間に世界的なセンセーションとなった。2025年8月、ゴドイはシーズン配信後初めて日本を訪れ、東京で開催された大型イベント「ONE PIECE DAY ’25」に登壇。日本のファンの前に立つのはこれが初めてであり、しかも日本語で『ONE PIECE』への愛と日本への想いを語ったことで、大きな話題となった。
今回はその来日時に、彼に単独インタビューする機会を得た。彼は『ONE PIECE』との出会い、日本文化とのつながり、そしてルフィを演じたことで人生がどのように変わったのかを熱く語ってくれた。
日本を知り、自分を知る
キャスティングが決まって以来、イニャキ・ゴドイは役だけでなく、その背景となる文化までも吸収しようとしてきた。多くの俳優がキャラクター研究で止まる中、彼は一歩踏み込み、日本語の勉強を始めたのだ。
「最初はほんの数単語しか知りませんでした」と彼は笑う。
「でも、ルフィを本当に理解するなら、彼の生まれた世界を理解しなきゃいけないと思ったんです。それは日本語を学び、日本の文化を知り、『ONE PIECE』を形作った価値観を学ぶことでした。」
その努力は確実に実を結んでいる。東京でのイベントでは、流暢な日本語でスピーチを披露し、ファンやメディアを驚かせた。私たちがその語学力を褒めると、彼は控えめにこう答えた。
「まだまだ知らない言葉がたくさんあります。同じ意味の言葉でも地域によって違うことにびっくりしました。京都や大阪に行ったとき、聞いたことのない表現で混乱することもありました。ゆっくり話せば大丈夫ですが、まだ道のりは長いですね。それでも友達と『ONE PIECE』の話をするくらいはできます。日本語を学ぶのは大好きなので、これからも続けます。」
彼の謙虚さはファンからも広く愛されている。インスタグラムには東京、京都、福岡、広島、神戸、熊本などを訪れた写真が投稿されており、観光客というよりも日本そのものへの深い愛情が伝わってくる。
シーズン1後の生活――一気に広がったチャンス
『ONE PIECE』シーズン1の配信は、ゴドイの人生を一変させた。それ以前はメキシコでドラマ『フー・キルド・サラ?』などに出演していたが、ルフィ役はまったく新しい扉を開いた。
「本当にたくさんの良いことが起きました。とても感謝しています。仕事のチャンスが一気に広がったんです。アメリカでマネージャーがついて、これまで縁のなかったプロジェクトから声がかかるようになりました。ルフィを演じられて心から幸せですし、このシリーズのおかげで日本と深くつながることができました。」
「一気に広がったチャンス」という言葉はむしろ控えめかもしれない。配信から数か月で、彼は国際的な雑誌やレッドカーペット、トークショーに引っ張りだこになった。それでも名声に浮かれることなく、むしろ責任感を強めているように見える。
ルフィから学んだこと――友情、夢、そして肉
ルフィを演じて一番学んだことは何か、と尋ねると、彼はしばし考えてから答えた。
「一番大きいのは、人とのつながりの力です。自分を信じること、仲間を信じること。自分の欲しいもののために戦うこと。時にはちょっとわがままでもいいし、お肉を好きなだけ食べてもいい(笑)。大事なのは野心と信頼できる仲間を持つこと。それが“海賊の道”だと思います。」
まさに『ONE PIECE』が描き続けてきたテーマそのものだ。戦いや宝探し以上に、夢とその夢を支える絆こそが物語の核であり、ゴドイの言葉はその精神を見事に映し出している。
ルフィになる――漫画から実写へ
ルフィという象徴的なキャラクターを実写化するのは簡単ではない。ファンの期待は重く、その記憶は鮮明だ。ゴドイは自分のアプローチを熱意を込めてこう語る。
「実写版では、自分にできることに集中しました。漫画を徹底的に読み込み、好きなシーンやルフィのポーズやセリフを選びました。そして撮影前にショーランナーに“絶対に残さなきゃいけないもの”を共有したんです。すべて計画通りにはいきませんが、できる限りルフィの言葉や動き、精神を忠実に表現しようとしました。尾田先生と直接話せたことは本当に大きな支えでした。」
実際に帆船に挑戦したというエピソードも披露してくれた。
「僕も航海を試してみたんですが、現実の航海はドラマみたいに甘くはなかったです(笑)。」
ルフィとイニャキ――互いに映し合う存在
インタビュー中、彼の自然な明るさと情熱は、ルフィそのものに重なって見える瞬間が何度もあった。冒険心がルフィに似ていると伝えると、彼の顔が輝いた。
「最高の褒め言葉です! ルフィは夢を追いかけ、自分の思ったことを言い、やりたいことをやり、仲間を大切にする。僕もその信念を持っていて、毎日少しでも彼に近づきたいと思っています。もちろん、僕はまだまだ成長途中です。ルフィほど自信家ではないし、あんなにたくさんは食べられません(笑)。でも“ビッグドリーマー”として、彼は僕のロールモデルなんです。」
尾田栄一郎への想い――「最高の友達」
尾田栄一郎について一言で表すなら? そう聞かれると、彼は即座に日本語で答えた。
「最高の友達。」
「尾田先生が作った世界が本当に大好きで、それを守りたいと思っています。本気で『ONE PIECE』を世界一の作品にしたいんです。」
その言葉は軽くない。『ONE PIECE』は尾田にとって人生そのものだ。そしてゴドイにとっても、キャリアと生き方を導く羅針盤になっている。
これから――シーズン2、そしてその先へ
ファンにとって嬉しいニュースは続く。Netflix はすでにシーズン2「Into the Grand Line」を2026年に世界同時配信すると発表。さらにシーズン3の制作も確定している。
東京イベントで新映像が流れたときの光景を、ゴドイは感慨深そうに振り返った。
「映像が流れるたびに、観客がキャラクターや新しいシーンごとに歓声をあげてくれて、本当に嬉しかったです。シーズン2を楽しみにしていてください! ルフィがたくさん食べるシーンもいっぱいありますよ!」
演技を超えて――文化の架け橋に
ゴドイの成功は単なる俳優としての活躍にとどまらない。ラテンアメリカ出身でありながら日本文化を受け入れ、Netflix の国際的な作品で主演を務める彼は、まさに文化をつなぐ存在だ。
過去、多くの実写化作品は苦戦してきた。『ドラゴンボール・エボリューション』や『デスノート』など、その評価は芳しくない。しかし『ONE PIECE』は違った。その違いの大部分は、ゴドイの演技にあると指摘する声も多い。
さらに彼が日本語を学び続ける姿勢は、文化的なリスペクトを示すものとして高く評価されている。国境を越えて理解し合うことの重要性が問われる今、彼はその一つの模範となっている。
新しい世代の海賊たちへ
インタビューの最後、彼の言葉を聞きながら思ったのは――ゴドイの『ONE PIECE』の航海は、まだ始まったばかりだということだ。まるでフーシャ村から出航したルフィのように、彼はキャリアという大海原に帆を上げたばかりなのだ。
かつてはただ好きな作品のオーディションを受けた一人の俳優が、今や世界的な物語の象徴となった。夢を追いかけるルフィのように、彼自身がその夢を体現している。
彼の言葉を借りれば――
「ルフィは僕の人生を変えました。」
そして彼自身もまた、ファンの夢や友情、希望を映し出す存在になりつつある。
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