「暴利産業」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは医薬品、眼鏡、保険などの業界でしょう。
暴利産業とは、生産者や経営者が不正な手段で適正を大きく超える利益を得ることを指します。通常は価格当局や裁判所などの公的機関によって判断されますが、消費者の生活経験からもある程度の判断は可能です。
では、フィギュア業界は「暴利産業」と言えるのでしょうか?
暴利とは何か?
暴利は必ずしも「高利益」と同じ意味ではありません。
例えばハイブランドのバッグは、製造原価の数倍~数十倍で販売されますが、これは市場に受け入れられているビジネスモデルであり、必ずしも「暴利」とは言えません。
つまり暴利かどうかは、価格が不当に高いか、正当なコストや価値に裏打ちされているかで判断する必要があります。
フィギュアに使われる主な素材
フィギュアの価格は、使用される素材や製造方法に大きく左右されます。代表的な素材は以下の通りです。
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キャスト樹脂(PU樹脂)
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日本製のHEI-CAST樹脂が代表的。硬度が高く、細部の再現性に優れる。
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製作難度が高く、コストも高額。
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ガレージキット(GK)や高級フィギュアに多く使われる。
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ポリストーン(宝麗石粉樹脂)
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樹脂に石粉を混ぜた素材。いわゆる「コールドキャスト」。
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重厚感があり、コストはキャスト樹脂の約3分の1程度。
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大型スタチュー(Prime 1 StudioやXM Studiosなど)に多用される。
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PVC(ポリ塩化ビニル)
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市場で最も一般的な量産素材。
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柔軟性があり、大量生産に向く。
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1/7スケールや1/8スケールの完成品フィギュアはほとんどPVC製。
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フィギュアが高価な理由
「ただのプラスチックなのに高すぎる」と思う人もいますが、フィギュアには以下のようなコストがかかっています。
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版権料
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人気アニメやゲームのキャラクターを立体化する場合、必ず版権料が発生。
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『ワンピース』『エヴァンゲリオン』『鬼滅の刃』などの有名IPは版権料が高額。
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原型師の報酬
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原型はフィギュアの命。複雑で精巧な造形ほど工数が増え、費用も高くなる。
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人気原型師は引っ張りだこで、依頼料も跳ね上がる。
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金型製作
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量産には金型が必須だが、製作コストは非常に高い。
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金型は100〜200回ほど使用すると摩耗し、複雑な造形ほど多くの分割・複数の金型が必要になる。
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塗装作業
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精密なフィギュアは今でも人の手での塗装が不可欠。
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目や衣装の模様などは職人技に近い。
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流通コスト
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海外からの輸送、通関、倉庫保管、販売代理店のマージンも加わり、最終価格はさらに上がる。
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フィギュアとブラインドボックスの違い
フィギュアとよく比較されるのが**ブラインドボックス(いわゆるトレーディングフィギュアや盲盒)**です。
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ブラインドボックスは「何が当たるかわからない」仕組みによって購買欲を刺激します。
限定やシークレットが存在し、二次市場では定価69元の商品が2000~3000元に跳ね上がることもあり、こちらの方が「暴利」に近い構造。 -
フィギュアは「工芸品・コレクション」としての性質が強く、購入者は“運”ではなく“造形・IP価値”を買っている点が大きく異なる。
フィギュアのコレクション価値
フィギュアは単なる玩具ではなく、時に投資対象にもなります。
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絶版による価値上昇:生産終了後、希少価値が高まり、プレミア価格で取引される。
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限定版の希少性:イベント限定やコラボ商品は特に価値が高い。
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感情的価値:作品やキャラクターへの愛情が購入理由となる。
ただし、これは**正規品(オリジナル)**に限られます。海賊版や模造品にはコレクション価値はほぼありません。
フィギュア業界は暴利か?
結論から言えば、フィギュア業界は単純に「暴利産業」とは言えません。
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価格は確かに高額ですが、その背景には明確なコストが存在します。
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医薬や盲盒のように「情報の非対称性」を利用して暴利を得ているわけではありません。
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フィギュアは文化的消費財であり、購入者の満足度や感情的価値が価格を支えています。
✅ まとめ
フィギュア業界は「暴利産業」ではなく、高コストかつ高リスクのカルチャービジネスです。ファンにとっては“情熱・芸術・投資”の結晶であり、メーカーにとっては版権料や製造コストと向き合う挑戦的な市場なのです。
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